チラシやウェブサイトで広告をする際には景品表示法や特定商取引法のルールを守って表示する必要があります。
その表示ルールに違反があると消費者庁や自治体から業務停止や課徴金などの処分を受けるリスクが生じます。
そうした表示ルール違反については、消費者庁や公正取引員会のパトロール(監視)、消費者から行政に対する苦情、同業者による報告などによって明らかにされることが多く、処分を受けることになればネットで情報共有されるので顧客の信用を失ってしまいます。
つまりチラシやウェブサイトに表示する広告の内容はコンプライアンスの観点から自主チェックをして、違法性が無い状態に保つ必要があるということです。
そこで広告表示をする際に把握しておくべき法令とチェック項目について記載します。
景品表示法
景品表示法は表示規制と景品規制についてルールが定められています。
<表示規制(禁止事項)>
(1)優良誤認表示
製品の品質等の内容が実際よりも著しく優良であると表示すること。
(例)「過剰なダイエット効果の宣伝」「産地偽装の食品」など
(2)有利誤認表示
製品の価格等の取引条件が実際よりも著しく有利に表示すること。
(例)「携帯電話がO円」「上げ底包装」「定価と売価の二重価格」など
(3)特定分野の表示
・無果汁の清涼飲料水についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示
<景品規制>
(1)一般懸賞
くじ引きやクイズなどの懸賞の景品最高額は購入価格の20倍まで。
(購入価格が5,000円以上の場合は10万円まで。)
(2)共同懸賞
商店街などの懸賞の景品最高限度額は30万円まで。
(3)総付(そうづけ)景品
購入者全員に景品を提供する場合は購入額の20%まで。
ポイントや金券は値引きと判断され、景品の制限は受けない。
(4)オープン懸賞
商品購入や入会を条件としない懸賞は最高金額の制限が無い。
特定商取引法
特定商取引法はBtoC型の消費者取引についてルールを規定する法律で、次の7つの取引類型が対象になります。
(1)訪問販売
(2)電話勧誘販売
(3)通信販売
(4)連鎖販売取引(マルチ商法)
(5)業務提供誘引販売取引(内職商法)
(6)特定継続的役務(学習塾・語学教室・家庭教師・エステ・美容医療・パソコン教室・結婚情報)
(7)訪問購入(出張買取)
これらの取引について契約書交付やクーリングオフに応じる義務などが定められています。
通信販売については取引内容の表示や法定返品権のルールが定められています。
薬機法
医薬品・医薬部外品(医薬品等)は、直接に体に影響を及ぼすことを目的とするものであるため、安全性の見地から厚生労働大臣の承認が必要とされ、厳しく管理がされています。
そのため医薬品等に認められた効能をいわゆる健康食品で広告・表示することは規制されています。
<医療広告の定義>
(1)患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
(2)医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
(3)一般人が認知できる状態にあること(認知性)
例えば、次のようものは、医療に関する広告に該当するので、広告可能とされていない事項や虚偽・誇大広告等に該当する場合には、認められません。
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
・アンチエイジング
・最高の医療の提供を約束!
イ 写真、イラスト、絵文字によるもの
・当該病院の写真であれば、広告可能であるが、他の病院の写真は認められない。
・病人が回復して元気になる姿のイラスト
ウ 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載
・新聞が特集した治療法の記事を引用するもの
古物営業法
古物営業法は、取引される古物の中に窃盗の被害品等が混在するおそれがあることから、盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的としています。
一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、又はこれらのものに幾分の手入れをした物品を「古物」といい、美術品など13品目が指定されています。
「古物」の取引をするには警察署で営業許可を得て、該当情報を表示する必要があります。
その他の各種業法(取扱商材に必要な許認可など)
食品の販売には食品営業許可、お酒の販売には酒類免許許可、プロバイダや携帯電話の販売には電気通信事業法の許可など、取り扱いをする商材によって官庁の許可が必要であったり、その商材に関連した販売規制ルールに従って必要な情報を表示する義務があるケースがあります。
監督官庁のウェブサイトの情報をよく確認しておく必要があります。
広告コンプライアンスのためのチェックリスト
チラシやウェブサイトに表示する広告について、一般的なチェックポイントは以下のとおりです。
「特定商取引法に基づく表示」(ウェブサイトの場合)の記載
ウェブサイトに「特定商取引法に基づく表示」のページを設けて以下の事項を漏れなく記載すること。
【法第11条】
1.商品・サービス・権利販売の対価(販売価格と送料の表示)
2.対価の支払い時期
3.商品の引渡し時期 権利の移転時期 サービスの提供時期
4.契約の撤回や解除についての事項
5.その他の省令で定める事項
【省令第8条】
1. 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
2.販売業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
3. 申込みの有効期限があるときは、その期限
4.販売価格以外に購入者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額
5.商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者責任についての定めがあるときはその内容
6.プログラム・データを記録した物を販売する場合にはその動作環境
7.定期購入契約の場合には、その取引条件
8.商品の販売数量の制限、販売条件の提供条件があるときは、その内容
9.広告の表示事項の一部を表示しない場合であって、カタログを有料負担させる場合はその金額
10.通信販売電子メール広告をするときは、販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス
誇大広告はないか?(優良誤認)
商材の品質・性能の優位性について、実際よりも過剰に良いものであるという表現をしていないか。
価格の表示(二重価格表示)は適正か?(有利誤認)
例えば通常価格と値引き価格の2つを並べて表示することを二重価格表示といいますが、この場合の通常価格が長期間に渡って実際に表示されていたものでないときは不当表示となります。(比較をする通常価格は概ね8週間以上の期間に渡って表示された実績が必要です)。
また、値引き価格を長期間表示しているとそれが通常価格とみなされるため、二重価格表示を中止しなくてはなりません。
販売キャンペーンの期間は適正か?(有利誤認)
例えば「10%割引キャンペーン」を実施する場合には、通常価格と値引き価格の二重価格表示を行うことになりますが、このキャンペーンが長期間になる場合は値引き価格が通常価格とみなされます。
キャンペーン終了後に値引きを中止する場合には、必ずキャンペーン期間を表示しなくてはなりません。
一般的な商品の場合は比較対照の通常価格は8週間以上の表示実績が必要で、値引き価格との比較(二重価格表示)が可能なのは4週間までとされています。
そうしたキャンペーン期間と二重価格表示の管理を怠ってキャンペーンを永続させる不当表示となってしまいます。
そのようなキャンペーン期間の永続・二重価格表示の長期化により不当表示の処分を受ける事例は多いので注意が必要です。
「ナンバー1」表示の根拠は示されているか?(優良誤認)
例えば「地域1番の売上」「同種製品で1番の反応速度」「最大の顧客満足度」など、様々な比較で「ナンバー1」を標ぼうするには根拠を示す必要があります。
外部機関調査や自社調査など、実際に「ナンバー1」であることの根拠資料がある場合は、その調査結果を注釈に記載することで「ナンバー1」表示をすることができます。
ただし、その調査資料に誤りがある場合には不当表示として扱われます。
根拠を掲載できない場合は「ナンバー1」を連想させる広告表現は削除しましょう。
比較広告の要件は満たしているか?(優良誤認)
比較の対象として、競争関係にあるどのような商品・サービスを選択しても違法性はありません。ただし、自己の供給する商品・サービスについて、これと競争関係にある特定の商品・サービスを比較対象として示し、商品・サービスの内容又は取引条件に関して、客観的な評価を広告に用いるには次の要件を満たさなくてはなりません。
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、(3)比較の方法が公正であること。
この要件を全て満たすことができない場合は比較広告をしてはいけません。
強調表示と打ち消し表示(優良誤認・有利誤認)
「打消し表示」とは、商材を強く訴求する「強調表示」に対となって例外を示すものです。
例えば、以下のような強調表示と打消し表示のセットで広告をするものです。
「30日間サービス無料」(強調表示)
「ただし、イケメンに限る」(打ち消し表示)
これはイケメンという条件付きでサービスが30日間無料になるという訴求です。
強調表示と打消し表示がわかりやすく示されていれば、こうした販売条件で訴求しても景品表示法の問題にはなりません。
しかし、この文字バランスや文字配色、文字間隔によっては打消し表示の告知が不十分となって、不意打ち性が問題になります。
打ち消し表示(注釈)は必ず強調表示の付近に配置し、見やすい文字の大きさ・色で表示しなくてはなりません。
他者の著作権を侵害していないか?(著作権法)
他者が作成した文章・画像・動画などのコンテンツを無断で転載するのは著作権法違反になります。
ただし、以下の要件を満たす引用については著作権法で認められています。
【引用の要件】
・既に公表されている著作物であること
・公正な慣行に合致すること
・報道・批評・研究などのための正当な範囲内であること
・引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること
・カギ括弧などにより引用部分が明確になっていること
・引用を行う必然性があること
引用には、その出典情報などの出所の表示義務もあります。
この引用の要件の中で「引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること」が怪しい記事が多いことが問題になります。
つまり、引用部分は必要最小限度に留めて、それ以外のオリジナルの記事(コンテンツ)の分量が多くなければいけないということです。
オリジナルコンテンツが主であり、引用部分はあくまで従の関係であることが明白である必要があります。
以上のチェックポイントに注意し、チラシやウェブサイトの原稿をチェックして適正な広告表示を行うようにしましょう。